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バイオコークス技術で東日本大震災の除染廃棄物問題を解決へ

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近畿大学(大阪府東大阪市)と中外炉工業株式会社(大阪市中央区)は、東日本大震災被災地で平成27年(2015年)1月に予定されている除染廃棄物仮置場から中間貯蔵施設への運搬において、中間貯蔵施設の容量、トラックによる搬入路の確保、運搬中および貯蔵施設での放射性物質の飛散・流出などの課題対し、近畿大学が開発したバイオコークス※1技術を用いた汚染バイオマス減容化装置により、多くの課題を解決できることが確認できました。

従来の減容化技術と異なり、汚染バイオマス減容化装置をトラックに搭載する※2ことで、点在する除染廃棄物仮置場で減容化作業が可能となり、中間貯蔵施設への運搬に必要な車両台数は約1/10に減少。さらにバイオコークスによる堅固化のため、汚染物質飛散の心配がない状態で中間貯蔵施設への輸送が可能となります。

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今後は、本装置を被災地で稼働するにあたり、その安全性、実用性を実証し住民の方々への理解を得るため、避難指示解除準備区域が残る福島県川俣町※3で非汚染物質を使ったデモンストレーション運転を計画しています(5~6月頃)。また、本格稼働について被災地の方々のご理解と協力を得るために、復興庁、環境省が募集している「平成26年度除染技術実証事業」へ応募準備を進めています。 本デモンストレーション運転を早期に成功させ、一日も早く被災地の汚染バイオマスの搬出が完了するよう、努力して参ります。


〈除染廃棄物に関する課題と本技術による効用〉

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  • (※1)バイオコークス
    バイオコークスは、近畿大学バイオコークス研究所副所長の井田民男が平成17年(2005年)に 石炭コークスの代替燃料として開発した新しい木質バイオマス固形燃料で、植物由来のため CO2排出量がゼロ計算されます。すでに国内で商用プラントが稼動し、鋳物用コークスの代替燃料として使用されています。また、「バイオコークスによる放射能汚染物質の減容化技術」は環境省から除染技術の一つとして認定されています。
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〈バイオコークス製造法〉

バイオコークスは、材料充填後、加圧―加熱過程を同時に行い、バイオマスに含まれる水蒸気のエネルギーを利用して形成する最新固形化技術。材料充填から成形まで約1時間程度のサイクルで製造が可能。
1.約1-3mm程度まで原料を粉砕、初期含水率を約5-15%程度まで調湿のうえ充填。
2.加圧力20MPa(直径10cmでは16トン)
3.加熱温度180℃程度で熱と圧力を加える
4.冷却過程で約30℃まで温度を下げる。

〈これまでの実績〉

  • 平成20年(2008年)4から7月、(株)豊田自動織機の東知多工場(愛知県)で、自動車エンジン部品を製造するキュポラ炉での実証試験を行い、バイオコークスが石炭コークスの11.4%を代替(製品製造工程への影響なし)することを確認。
  • 平成22年(2010年)4月、(株)ナニワ炉機研究所と共同で、24時間で約1トンの製造能力を持つ実用タイプのバイオコークス製造装置を開発。
  • 平成23年(2011年)4月、大阪府森林組合が世界初のバイオコークス商用製造プラントを大阪府高槻市に建設。間伐材などを燃料化して販売。現在も稼働中。
  • 平成23年(2011年)9月、近畿大学とJFEエンジニアリング(株)、(株)ナニワ炉機研究所、日本砿研(株)が共同実証試験。廃棄物高温ガス化直接溶融炉で石炭コークス56.5%代替に成功。
  • 北海道経済産業局の平成22年(2010年)度補正予算「地域イノベーション創出研究開発事業」の支援を受け、平成24年(2012年)に連続でバイオコークス生成を可能にすることで生産能力を従来機の約4倍に高めた新型連続製造機の 開発に成功。
  • 平成24年(2012年)1月、バイオコークスは平成23年度新エネ大賞の資源エネルギー庁長官賞を受賞。
  • 平成24年(2012年)12月、近畿大学、(株)豊田自動織機、(株)ナニワ炉機研究所、大阪府森林組合が平成24年度地球温暖化防止活動環境大臣賞を共同受賞。
  • 平成26年(2014年)3月、近畿大学と大阪ガスエンジニアリング(株)が共同で、パーム椰子(やし)原料「バイオコークス」の海外における生産実証の導入試験開始を発表。独立行政法人科学技術振興機構の実施する「産学共同実用化開発事業」として採択されました。
  • (※2)汚染バイオマス減容化装置 概要
    工業用バイオコークス製造機に汚染バイオマスの粉砕機及び乾燥機を連結したもの。それぞれをトラックに搭載し運搬することができます。そのため、仮置場での減容化が可能となり、中間貯蔵施設への運搬に必要なトラックが大幅に減少。また、バイオコークスの堅固性により、安全に運搬することができます。 生産量300kg/日を想定している。
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  • (※3)福島県川俣町
    福島県伊達郡川俣町は、東京電力福島第一原発から20キロ圏外であるが、放射能濃度が高い山木屋地区の一部が避難指示解除準備区域に指定されており、今も多くの方が仮設住宅で生活している。 近畿大学は震災後、東日本大震災復興支援室を設置。特に13学部48学科を擁する総合大学としての研究力を生かし、総力を挙げて東日本大震災に伴う原発事故により一部が計画的避難区域に指定された川俣町の早期復興を支援するために「"オール近大"川俣町復興支援プロジェクト」を立ち上げました。 プロジェクトは近畿大学教員から提案された復興支援策を、(1)農業・産業・町づくり振興支援、(2)除染推進支援、(3)健康・心身ケア支援、(4)放射線・放射能測定支援のグループに分け、川俣町民の意向を取り入れつつ、「川俣町震災復興アドバイザー」として平成25年(2013年)5月31日から本格的に始動。本件もその一環として実施しています。
  • 〈ご参考〉

    ■近畿大学 概要

    学  長 : 塩﨑 均
    本部所在地 : 〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
    沿革・研究教育分野 :
    1925年(大正14年)創立の大阪専門学校と、1943年(昭和18年)創立の大阪理工科大学を母体として、1949年(昭和24年)に設立された「医学から芸術まであらゆる分野を網羅した日本屈指の総合大学」です。 理系学部を多く有し、建学の精神のひとつである「実学教育」が高い評価を受け、科学研究費採択件数、受託研究費実施件数とも増加しています。特に民間企業からの受託研究実施件数は平成23年度221件全国1位(※)平成24年度195件全国3位(※)であり、「近畿大学リエゾンセンター」という専門部署が企業と研究者のマッチングを行い、産学連携が円滑に行われています。

    • (※)出典:文部科学省 平成23・24年度 「大学等における産学連携実施状況」について

    ■中外炉工業株式会社 概要

    代表取締役社長: 西本 雄二
    本社所在地 : 541-0046 大阪市中央区平野町3-6-1(あいおいニッセイ同和損保御堂筋ビル)
    資本金 : 61億7,672万円
    従業員数 : 479名(平成25年6月25日現在)
    沿革・事業内容 :
    限りあるエネルギー資源の有効活用を追求する「エネルギー分野」、情報化社会のさらなる発展に寄与する「情報・通信分野」、そして環境保全実現の期待に応える「環境保全分野」。中外炉工業は、3つの分野を通じて新たな価値を生み出すとともに、地球環境の保全に貢献する"技術立社"として人と地球の未来を創造してまいります。

    ・バイオコークス製造設備は、学校法人近畿大学および(株)ナニワ炉機研究所との共同研究により製品化されました。
・バイオコークスのロゴマークは学校法人近畿大学および(株)ナニワ炉機研究所の登録商標です。

    プレスリリース(PDF;645KB)

    関連リンク
    バイオコークスプロジェクト
    東日本大震災復興支援室

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